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遺留分を認めない遺言は有効?効力・請求された場合の対処法を解説

「遺留分を認めない遺言は有効?」「遺留分を認めないとの記載に法的な効力があるのか知りたい」「特定の相続人からの遺留分請求を防ぐ方法や、請求額を抑える方法を知りたい」と思っていませんか?

遺留分を請求され、相続後に紛争になることを心配しているのではないでしょうか。遺留分を「認めない」とする遺言自体は法的に有効です。

本記事では、「遺留分を認めない遺言は有効なのか、効力・請求された場合の対処法」を紹介します。遺留分トラブルのリスクを抑えるために生前からできる対策まで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

●遺言書に「遺留分を認めない」と書いてもその記載だけでは権利は消滅しない
遺言書に「遺留分を認めない」と書かれていても、遺留分は法律によって保護された相続人の最低限の権利であるため、その記載は無効となり、権利は消滅しません。

・遺留分を侵害された遺留分権利者は遺留分侵害額を請求できる
・遺留分を侵害しているという理由だけでは遺言書は無効にならない
・2019年7月1日以後に開始した相続では原則として金銭で精算する

まずは遺留分と遺言書の関係性における基本ルールと、万が一権利が侵害された場合の法的な効力について確認していきましょう。

◯遺留分を侵害された遺留分権利者は遺留分侵害額を請求できる
遺産相続において遺留分を侵害された「遺留分権利者」は、多くの遺贈や贈与を受けた者に対し、侵害された金額に相当する金銭を支払うよう請求することができます。

民法が特定の相続人に対して最低限の財産取得割合を保障しているため、その権利を守るための直接的な救済手段が必要だからです。

亡くなった人がすべての財産を特定の他人に譲るという極端な遺言を残した場合、配偶者や子どもは法定遺留分に満たない分を金銭で請求できます。

この金銭的な要求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれ、相手方が任意の支払いに応じない場合は法的手段へと移行して解決を図ります。

遺産が偏った割合で処分されてしまった場合であっても、対象となる相続人は侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利を有しています。

◯遺留分を侵害しているという理由だけでは遺言書は無効にならない
遺留分を無視、あるいは侵害する内容の遺言書であっても、それだけで遺言書自体が無効になるわけではありません。

遺留分は権利者が請求権を行使して初めて現実化するものであり、実際に請求するかどうかは当事者の自由意思に委ねられているためです。

「全財産を友人に遺贈する」という遺言書が存在する場合でも、残された家族がそれに不満を抱かずに納得すれば、遺言の通りに遺産が分割されます。

相続人から具体的な金銭請求がなされない限り、その遺言書自体は法律上の効力を保ち続けます。

遺留分侵害だけでは遺言は無効になりませんが、方式違反や遺言能力の欠如があれば無効となる可能性があります。

◯2019年7月1日以後に開始した相続では原則として金銭で精算する
2019年7月1日施行の法改正以降、遺留分返還の手段は従来の共有関係を発生させる「現物返還」から、原則として「金銭での支払い」に統一されました。

不動産や株式が細かく共有名義になると、その後の売却処分や管理をめぐって新たな親族トラブルを引き起こしやすかったためです。

法改正前は自宅の権利が切り分けられて共有物となっていましたが、現在は自宅の所有権はそのままに、遺留分の価値に応じた現金だけで引き継ぎを精算します。

不動産の複雑な共有関係が生まれるリスクを防ぎ、感情を抜きにしたスムーズな遺産分割が進むようになりました。

現行法では金銭請求が原則ですが、合意により不動産などで代物弁済することもできます。

●遺留分とは?
遺留分とは、一定の法定相続人に対して法律上最低限保障されている、遺産の取得割合のことです。

・遺留分が認められる人と認められない人の違い
・遺留分の割合は「遺留分全体の割合×法定相続分」で計算する

法律が誰にどのような目的でこの不可侵の権利を認めているのか、その具体的な範囲と計算の仕組みについて詳しく解説します。

◯遺留分が認められる人と認められない人の違い
遺留分は配偶者、子やその代襲相続人、直系尊属に認められ、兄弟姉妹とその代襲相続人には認められません。

民法は、被相続人と密接な生計維持関係にあったり、将来の生活を特に保障すべき近親者にのみ遺留分を認める方針をとっているためです。

亡くなった方に配偶者と兄弟がいる場合、配偶者には生活保障としての遺留分がありますが、独立していることの多い兄弟にまでは認められません。

兄弟姉妹には遺留分はありませんが、方式違反や遺言能力などを理由に遺言の効力を争われる可能性はあります。

相続人であれば無条件に全員に遺留分があるわけではなく、兄弟姉妹やその甥・姪には対象外とされている点に注意が必要です。

◯遺留分の割合は「遺留分全体の割合×法定相続分」で計算する
各相続人の具体的な遺留分の割合は、総体としての「法定の遺留分」に対して、それぞれの持つ「法定相続分」を掛け合わせて算出します。

相続人全体の構成によって確保すべき財産の全体の枠(総体的遺留分)が決まり、その中を個人の本来の取り分で按分するためです。

親などの直系尊属のみが相続人の場合は全体の3分の1、配偶者や子が含まれる場合は全体の2分の1が総体的遺留分となります。

配偶者と子が1人ずついる場合、全体の2分の1に各自の法定相続分である2分の1を掛け合わせ、それぞれ4分の1が遺留分となります。

相続人の構成から全体の割合を掴み、そこに個別の法定相続分を掛けて個人の取得分を導き出すのが正しいルールです。

●遺留分侵害額の計算方法と対象になる財産
遺留分侵害額を算出するには、相続開始時の財産額に一定の生前贈与の価額を加え、そこから債務を差し引くなど、厳密に財産を評価する必要があります。

・相続開始時の財産に一定の贈与を加え被相続人の債務を差し引く
・相続人への特別受益に当たる贈与は原則として相続開始前10年以内が対象になる
・相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年以内が対象になる
・当事者双方が遺留分権利者に損害を与えると知っていた贈与には期間の例外がある
請求者が相続・遺贈・特別受益で取得した財産を考慮する
・不動産や非上場株式は評価方法によって遺留分侵害額が変わる

どのような財産が算定対象になり、具体的にどう計算されるのか、法律で定められた厳密な基準を整理しましょう。

◯相続開始時の財産に一定の贈与を加え被相続人の債務を差し引く
遺留分を計算するための基礎財産の額は、「被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額」に「対象となる生前贈与の価額」を加え、そこから「被相続人の債務の全額」を控除して算定します。

亡くなった瞬間の単純なプラス財産だけを対象にすると、生前に対策として財産を他人に渡して隠していた場合に対応できないためです。

遺産が3,000万円で、生前贈与が1,000万円あり、借金が500万円残っていた場合の基礎財産は、差し引き3,500万円になります。

この明確な算式を経て初めて、法律が定める適正な「遺留分算定の基礎となる財産」の全体像が明らかになります。

相続財産から借金などの債務を引き、さらに特定の贈与を足し戻すことで算出の確かな土台を作ることが第一歩です。

◯相続人への特別受益に当たる贈与は原則として相続開始前10年以内が対象になる
共同相続人に対して生前におこなわれた特別受益(婚姻や生計の資本としての贈与)は、原則として相続開始前の10年間にされたものに限り、遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。

長い期間の制限を設けることで、何十年も前の古い生前贈与まで遡って計算されるのを防ぎ、相続人が不測の金銭請求を突然受けるリスクを和らげています。

たとえば、20年前に住宅購入資金として渡した特別受益は、この原則に基づいて遺留分計算の対象から外されることになります。

ただし、この10年制限は生計の維持や独立のための資金援助など、いわゆる「特別受益」に明確に該当する贈与にのみ適用される特別なルールです。

相続人に対する生前贈与をリストアップして計算する際は、まず「相続開始前10年以内」の範囲に収まっているかを適切に確認しましょう。

◯相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年以内が対象になる
相続人ではない第三者に対して生前におこなわれた贈与については、原則として相続開始前の1年間になされたもののみが遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。

相続権を持たない第三者が、遥か昔に受け取った財産まで遡って返還を迫られてしまうと、その生活や経済活動が過剰に脅かされるためです。

親族ではない友人や、お世話になった第三者に数年前にプレゼントした財産は、原則として遺留分を侵害する財産として引き戻す必要がありません。

第三者への生前贈与については、相続の直前である1年以内に実行された直近のものだけにカウントが絞られます。

相続人以外の他者に渡った生前の財産処分については、基本的に「亡くなる直前1年間の贈与」のみが請求の計算に含まれることを覚えておきましょう。

◯当事者双方が遺留分権利者に損害を与えると知っていた贈与には期間の例外がある
期間外の贈与でも双方が損害を知っていれば算入されますが、相続人への贈与は特別受益に当たるものに限られます。
悪意を持って故意に遺留分制度をすり抜けようとする不当な行為を許してしまうと、遺族の最低限の生活を保障する法律の趣旨が完全に破綻してしまうためです。

被相続人と相手方が事前に共謀し、遺留分から財産を守るために意図して15年前にほぼ全財産を贈与したような場合は、この例外ルールが働きます。

双方に遺留分権利者を害する悪意があったと法的に認められる場合は、通常設けられている時効のような期間制限は一切適用されません。

◯請求者が相続・遺贈・特別受益で取得した財産を考慮する
請求者が実際に請求できる「遺留分侵害額」を確定する際は、算出した「自身の遺留分額」から、自分が「相続や遺贈によって現実に得た財産の額」や「過去に受け取った特別受益」の価額を差し引いて考慮しなければなりません。

自分が手に入れた利益をすべて無視して満額を請求すると、請求者が不当に多くを受け取ることになり、他の相続人との公平性が著しく失われるためです。

遺留分が1,000万円の人が、遺贈で300万円、過去の特別受益で200万円を得ていれば、実際に請求できる金額は500万円になります。

これは「遺留分侵害額の算定における特別受益等の控除」と呼ばれ、特定の相続人が二重に多くの利益を独占することを防ぐための大切な調整です。

遺留分侵害額は対象となる特別受益と取得財産を控除し、承継した相続債務を加算して算定します。

◯不動産や非上場株式は評価方法によって遺留分侵害額が変わる
遺留分の算定に含まれる不動産や非上場株式は一義的な価格がつきにくく、どの「評価方法」を基準にするかによって財産評価額が変わり、侵害額の請求額も大きく上下します。

現金などの金融資産のように明確な市場価格を持たないため、評価の基準とする指標や査定の手法によって価値の捉え方に幅が生じるからです。

不動産であれば路線価、固定資産税評価額、または実勢価格(時価)のどれを用いるかによって、数千万円単位の誤差が容易に発生します。

非上場株式の場合も、純資産価額方式や類似業種比準方式など、採用する計算ロジックによって算出される企業の価値が異なります。

対象となる特殊な資産の評価基準をめぐっては意見が分かれやすく、主張する評価額次第で遺留分侵害額の着地点が大きく左右されます。

●遺留分トラブルのリスクを抑えるために生前からできる対策
特定の相続人に遺産を多く残したい場合など、後々の家族間での遺留分侵害トラブルを回避するために、生前から備えるのが重要です。

・遺留分を侵害しない財産配分で遺言書を作成する
・生前に相続人と話し合い財産配分の理由を共有する
・法的拘束力のない付言事項で財産配分の理由を説明する
・家庭裁判所の許可を得て生前に遺留分を放棄してもらう
・虐待・重大な侮辱・著しい非行がある推定相続人について廃除を申し立てる

あらかじめ法的あるいは感情的な摩擦を防ぐために有効な、具体的な5つの生前対策について詳しく見ていきましょう。

◯遺留分を侵害しない財産配分で遺言書を作成する
紛争回避対策は、各相続人の「遺留分(法律上の最低限の取り分)」を侵害しない範囲で、遺贈や遺産分割の割合をあらかじめ慎重に調整した遺言書を作成しておくことです。

最初から誰もが法的に不満を持たない最低限の分け方になっていれば、死後に他者に対して遺留分侵害を理由とした金銭請求が起こる原因そのものを排除できるためです。

自宅不動産を長男に相続させる代わりに、他の子どもたちには遺留分を満たす分の預貯金をバランスよく分配する内容にしておきます。

遺言書の財産配分をあらかじめ細かくコントロールすることで、相続開始後の円滑な遺産承継が可能になります。

紛争を絶対に起こしたくないのであれば、相続人の法的権利割合を最初から下回らないよう細心の注意を払って設計した遺言書の作成が、堅実で安全な近道です。

◯生前に相続人と話し合い財産配分の理由を共有する
被相続人の生前のうちに推定相続人全員と膝を突き合わせて話し合い、特定の人物に多く資産を分配する理由や想いを率直に伝え、家族の理解と納得を得ておくことが感情的な対立を防ぐためには効果的です。

親族間の争いは単なる金額だけの問題ではなく、「自分は不当に軽視された」という感情的なしこりから激化することが多いためです。

生前の家族会議などで、長男が事業を継いで実家を守るから株式と自宅を集中させるが、その代わり親の老後をすべて見てくれたのだと皆の前で説明します。

本人が直接自分の言葉でその思いや経緯を説明することで、相続人も感情的な反発を抑えて頭では納得しやすくなります。

遺言書の作成といった事務的な作業だけでなく、生前の率直な話し合いを通じた相互理解こそが、感情的な遺留分紛争の種を未然に刈り取ります。

◯法的拘束力のない付言事項で財産配分の理由を説明する
遺言書の末尾などに、法的効力を持たない「付言事項」を設けて、この財産配分に至ったやむを得ない経緯、家族への深い感謝、円満に暮らしてほしい旨のメッセージを残すことで、遺留分請求を思いとどまらせる心情的効果が期待できます。

相続人が遺言書を開いた際に、故人の温かい本音や家族の未来を願う真摯なメッセージに触れると、法的な争いに持ち込むのを思いとどまるようになるからです。

次男は昔多額の留学資金を援助して自立させたため、今回は長女のこれからの生活を支援するために多くの財産を残す、といった真意を遺言書に書き添えます。

これが心のクッションとなり、不公平感を抱いた家族も「本人の最期の意思ならば尊重しよう」と気持ちを切り替えてくれます。

法的効力がなくとも、遺言書に温かい「付言事項」として詳細な動機と家族への愛を残しておくことは、残された遺族の衝突を回避する役割を果たします。

◯家庭裁判所の許可を得て生前に遺留分を放棄してもらう
特定の相続人が納得している場合、被相続人の生前にその相続人が家庭裁判所へ「遺留分放棄の許可」を申し立てて許可の審判を得ておくことで、死後にその者が遺留分を請求してくるリスクを法的に排除できます。

本人の完全な自由意思に基づくものであれば、裁判所の厳しい審査を通過することで、生前に自らの判断で権利をあらかじめ手放すことが法的に可能なためです。

家業を継ぐ長男以外の兄弟たちが、すでに十分に生前贈与を受けていて承知している場合、自ら家庭裁判所で遺留分放棄の手続きを踏むことができます。

亡くなった後に万が一気が変わって「やっぱり一部の現金を請求する」といった不測の事態を防げます。

お互いの合意がある前提ならば、生前に裁判所経由で放棄の手続きを完了させることが、死後の不必要な争いを確実に防ぐ最高峰の手段です。

◯虐待・重大な侮辱・著しい非行がある推定相続人について廃除を申し立てる
遺留分を有する推定相続人は、生前の申立てまたは遺言執行者による死後の申立てを家庭裁判所が認めた場合に廃除されます。

親不孝を極めたり、反社会的な非行によって家族を深く傷つけ苦しめた者に対してまで、法律がその最低限の権利を無理に守る必要はないと考えられているためです。

生前にわたって暴力や金銭の不当な搾取、著しい侮辱を繰り返してきた特定の子どもを相続人から外すために、廃除申立ての手続きを家庭裁判所でおこないます。

裁判所に認められれば、その人物は戸籍上も相続資格を奪われ、遺留分も一切主張できなくなります。

もし重大な非行がある推定相続人からの不当な遺留分請求を断固として拒みたい場合は、生前の裁判手続きや遺言により、厳格な「廃除」を実行することを検討してください。

●遺留分侵害額の支払いに備える方法
特定の人物に大きな遺産を残す結果、どうしても他者の遺留分を侵害してしまう場合は、後から高額な請求をされても相続人が対応できるよう、現金の確保や仕組みを利用した資金準備をしておくべきです。

・生命保険を活用して遺留分侵害額の支払資金を準備する
・預貯金など換金しやすい財産を支払資金として残す
・複数の受遺者がいる場合は遺留分の負担割合を遺言書で指定する

残された相続人が破産や不動産を手放すといった窮地に陥らないための、実践的な支払準備のアプローチについて理解しましょう。

◯生命保険を活用して遺留分侵害額の支払資金を準備する
相続人を受取人とする生命保険は、請求手続後に保険金を受け取ることができ、一定の非課税枠を利用しながら支払資金を確保できる場合があります。

死亡保険金は請求手続と保険会社の支払可否判断を経て支払われるため、死亡直後に必ず即金で受け取れるわけではありません。

自宅を引き継ぐ長男を受取人とした保険金により、急に他の兄弟から請求が届いたとしても、保険金をそのまま現金での支払原資に充当できます。

遺言で不動産などの現物資産を特定の者に集中させる場合は、それとセットで、生命保険という非常に強力な仕組みを用いて請求に耐えうる現金を用意しておきましょう。

◯預貯金など換金しやすい財産を支払資金として残す
主要な遺産が不動産や非上場自社株といった売却が難しい資産である場合、あらかじめ遺留分の支払い対象として利用できるよう、手元に流動性の高い預貯金や換金性の高い財産を残しておく配慮が不可欠です。

遺留分侵害額請求は原則として金銭での即時支払いを求められるため、すぐに現金化できない資産ばかりだと、住んでいる不動産を叩き売りせざるを得なくなるためです。

不動産価値が4,000万円ある一方で、手元の現金や預金が全くない状態だと、1,000万円相当の遺留分請求に対して支払いが立ち行かなくなります。

このような事態を避けるため、十分な普通預金や定期預金を、特定の財産を多く引き継ぐ相続人のためにバランスよく残す必要があります。

相続人が不意の金銭支払いで自己破産や住居喪失の窮地に陥らないためにも、換金が容易な「流動性資金」をバランスよくポートフォリオに残すよう計画しましょう。

◯複数の受遺者がいる場合は遺留分の負担割合を遺言書で指定する
遺言で負担割合を指定できるのは、複数の受遺者または同時に贈与を受けた複数の受贈者の間に限られます。

受遺者と受贈者がいる場合は受遺者が先に負担し、遺言でこの順序を逆転させることはできません。

受遺者が複数に分散する複雑な遺言内容を設計する場合には、誰がどのような割合で最優先して遺留分の支払いを引き受けるかをあらかじめ詳細に指定してください。

●遺言書があるのに遺留分侵害額を請求された場合の対処法と注意点
実際に遺留分侵害額を請求された場合、ただちに相手の請求にそのまま応じるのではなく、まず相手方の権利の有無や正当な金額、請求が時効を迎えていないかなどを冷静かつ網羅的に精査して臨みます。

・請求者が遺留分権利者に該当するか確認する
・実際に遺留分の侵害が発生しているか確認する
・請求の意思表示が1年または10年の期限内におこなわれたか確認する
・遺産・贈与・債務・特別受益を調査して請求額を再計算する
・請求額の根拠となる不動産などの評価方法を確認する
・当事者間で支払額・支払期限・分割払いについて交渉する
・一括払いが難しい場合は裁判所による支払期限の許与を検討する
・話し合いで合意できない場合は調停や訴訟で解決する

突然の請求に対してもパニックにならず、1つずつステップを踏みながら有利に、かつ誠実に対処する方法を体系的に学びましょう。

◯請求者が遺留分権利者に該当するか確認する
請求者が遺留分権利者本人またはその承継人に当たるか、戸籍などで確認します。

相続関係は非常に複雑であり、まれに法律上の遺留分を全く持たない立場(兄弟姉妹やその甥・姪など)の親族が勘違いや無知によって請求してくる場合があるためです。

亡くなった方の実弟から「遺留分として一定割合を支払え」という書面が届いたとしても、兄弟姉妹には民法上遺留分がありません。

そのほか、すでに家庭裁判所で遺留分の放棄を過去に完了している者等から届いた請求には、一切応じる義務はありません。

相手から不意の連絡が来たからといってすぐに金銭支払いの約束を交わさず、まずはその人に本当に請求資格があるかを冷静に確認することから始めてください。

◯実際に遺留分の侵害が発生しているか確認する
請求してきた相続人が自身の法定の遺留分を下回る相続や贈与しか受けていないのか、あるいはすでに十分な特別受益を過去に受けており実際には「侵害」が発生していないかを個別の財産関係から確かめます。

相手が自分の不遇を訴えている場合であっても、実は生前の段階で多額の支援(住宅購入資金や開業資金など)を受けており、法的に十分な財産を既に手にしている可能性があるからです。

15年前の住宅資金贈与は原則として算入されず、双方が遺留分権利者への損害を知っていた場合などに限り例外となります。

検証を怠り、額面通りに相手の要求を丸呑みして支払いを約束してしまうと、払いすぎという大きな経済的損失を被ることになります。

相手が主張する侵害の有無をそのまま信じ込まず、真の意味での「遺留分侵害」が現実の客観的事実として生じているかを精密に算定する必要があります。

◯請求の意思表示が1年または10年の期限内におこなわれたか確認する
遺留分侵害額請求権には厳しい期限があり、「相続開始および遺留分侵害の事実を知った時から1年」または「相続開始の時から10年」のいずれかを過ぎた請求については、時効により支払いを拒めます。

相続から長い年月が経ったあとに突然請求されることで、相続人の生活基盤が理不尽に脅かされるのを防ぎ、法的な関係を早急に安定させるためです。

被相続人が亡くなって自分の取り分がほとんどないと知った日から1年2カ月後に届いた内容証明郵便の請求は、時効の完成を主張することで合法的に拒否できます。

同様に、亡くなった事実を全く知らなかったとしても、相続開始(死亡日)からすでに10年以上経過していれば、その権利は法的に完全に消滅します。

請求書を受け取った際は、まず「いつ知ったのか」「いつ相続が発生したのか」という正確なタイムラインを精査し、時効による支払いの完全拒否ができないか確認しましょう。

◯遺産・贈与・債務・特別受益を調査して請求額を再計算する
相手が請求書等で主張する侵害額は過大に見積もられているケースも多いため、被相続人のすべての財産・生前贈与の履歴や債務を自ら再調査し、正しい法的算出ルールに沿って請求額の再計算をおこないます。

請求額には計算漏れや評価の相違があり得るため、故意を決めつけず資料に基づいて再計算します。

被相続人が遺したローンなどのマイナス財産や未払いの入院費などは基礎財産から差し引かれるべきですが、相手の請求書ではこれらが加味されていないことがよくあります。

すべての銀行残高や不動産の価値、相手に渡っていた過去の財産移動履歴を丹念に調査することが、請求額の不当なインフレを暴く切り札になります。

提示された言い値にそのまま合意するのではなく、自分ですべての増減要因を精査し直し、客観的に算定された金額まで請求額を修正しましょう。

◯請求額の根拠となる不動産などの評価方法を確認する
請求額に算出された不動産や株式の評価基準を点検し、より一般的で合理的な基準に修正した評価額を算出して交渉することで、請求額を大幅に圧縮できる可能性があります。

不動産は相続開始時の時価で評価するのが原則で、実勢価格を用いること自体は請求額の水増しではありません。

こちら側が、評価基準として実勢価格ではなく客観的かつ広く実務で用いられる「路線価」や「固定資産税評価額」を適用して再計算し、その正当性を対抗案として示すことができます。

相手が一方的に雇った不動産鑑定士の見積もりに対しても、別の客観的指標を対抗馬として出すことで、中立的な交渉の土台へと引き戻せます。

財産評価は1つの答えがあるわけではないため、相手の不合理な評価基準を見つけ出し、双方が納得のいく一般的な相場評価へと修正・減額させる交渉姿勢が大切です。

当事者間で支払額・支払期限・分割払いについて交渉する
金額自体が妥当であっても、現時点でまとまった資金が手元にない場合は、誠実かつ丁寧に分割払い、または支払期限の引き延ばしなどを直接話し合って交渉し、合意事項を必ず公正証書等の書面に残します。

法的に正当な支払義務であっても、ただ単に「お金がないから払えない」と拒否し続けると即座に裁判を起こされ、大切な財産を差し押さえられる危険性があるためです。

具体的には「総額600万円を、毎月10万円ずつの5年分割で支払う」という無理のない返済計画を提案し、合意が得られたら公証役場で「金銭準消費貸借契約」などを結びます。

確実な法的書面にすることで、お互いに支払いに対する約束違反を防ぎ、将来の蒸し返しによるさらなるトラブルを未然に防止できます。

法的にお金を支払う義務が確定した後は、パニックを避け、誠実な話し合いにより、無理のない「分割・猶予の返済プラン」を引き出し書面化することに全力を注ぎましょう。

一括払いが難しい場合は裁判所による支払期限の許与を検討する
交渉がどうしても難航し一括払いを強要されるものの現金の即時調達が困難な場合は、裁判所に請求をして「相当の期限の許与」を認めてもらい、支払期限を数カ月〜数年単位で法的に猶予してもらう制度の利用を検討します。

民法第1047条第5項に基づき、多額の現金をすぐに用意できないやむを得ない事情があるときは、裁判所が総合的に判断して債務者の返済期限を法的に引き延ばしてくれる特別な猶予措置が用意されているためです。

主な遺産が実家の土地建物のみで、売却手続きにどうしても時間がかかる場合や、相続人が手持ちの現金を使い果たしてしまっている窮地では、この制度を活用できます。

裁判所からの「期限の許与」が認められれば、その決定された猶予期間中は遅延損害金が発生せず、相手から直ちに資産の差し押さえを受ける心配もなくなります。

もし即座の一括支払いを強引に迫られ、普通の生活の破綻が目の前に迫っている深刻な状況であれば、速やかに裁判所へ「期限の許与」を申し立てる手続きを選択しましょう。

話し合いで合意できない場合は調停や訴訟で解決する
当事者間のみでの話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てて第三者を交えて協議し、それでも不成立であれば「訴訟(裁判)」に移行させて判決による決着を図ります。

感情的な対立が限界に達している状況下では、どれほど当事者同士で会合を繰り返しても水掛け論に終始し、お互いが納得する合意点には到達しないためです。

裁判所の調停では、中立的な立場である調停委員が双方の財産資料や言い分を整理し、常識的な落としどころをプロの視点から論理的に提示してくれます。

調停でも折り合いがつかない強固な膠着状態になった場合は、最終的に裁判官にすべての事実関係を客観的な証拠に基づいて判断させ、判決により支払うべき強制力のある金額を決定してもらいます。

当事者同士の話し合いでまったく埒が明かないときは、感情的な直接交渉をやめ、裁判所における調停や訴訟などの公的な解決手続きへ速やかに移行してください。

●まとめ
遺言書に「遺留分を認めない」と記載しても、その記載だけで相続人の遺留分を消滅させることはできません。

遺留分は、配偶者や子など一定の相続人に法律上認められた最低限の取り分です。

そのため、特定の相続人に財産を一切相続させない内容の遺言書であっても、遺留分を侵害された人は、遺留分侵害額請求によって侵害額に相当する金銭を請求できる可能性があります。

一方、遺留分を請求された場合でも、相手の請求額をそのまま支払わなければならないとは限りません。

請求者が遺留分権利者に該当するか、請求期限を過ぎていないか、生前贈与や特別受益があるか、不動産の評価額が適切かなどを確認したうえで対応することが重要です。

遺留分をめぐるトラブルは、遺留分を考慮した財産配分、生前の話し合い、付言事項による遺言内容の説明、支払資金の確保などによって、リスクを抑えられる場合があります。

そのため、現在、トラブルになりにくい遺言書を作成したいとお考えの方は、法律のプロである弁護士へ相談しながら作成するのがおすすめです。

遺言書の種類や記載方法、手続き方法や問題になりやすいポイントなどを含め、ぜひ弁護士に相談しながら進めてみてください。

藤沢市、鎌倉市、茅ヶ崎市近郊で、遺産分割に関してお困りでしたら弁護士松永大希(藤沢かわせみ法律事務所)までご連絡ください。電話 0466−52−5637|受付時間は10:00から18:00メール info@kawasemi-law.comよろしくお願いします!

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