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遺言書が勝手に作成されていたらどうなる?無効になるケースを紹介

遺言は、被相続人の意思を反映させるための制度です。しかし被相続人以外の人物が勝手に遺言書を作成してしまい、効果を巡ってトラブルになる可能性があります。

この記事では、遺言書が無効とされるケースについて紹介しましょう。併せて遺言書が勝手に作成された場合の対処法にも触れます。

相続人間とのトラブルを防ぐべく、予防策として押さえたい人はぜひ参考にしてください。


●遺言書が無効とされるケース
遺言書の作成方法は、民法でも細かくルールが定められています。本人が書いたかどうかにかかわらず、書き方が誤っている場合も原則として無効です。ここでは遺言書が無効になる一般的なケースを紹介しましょう。


◯本人が書いていない場合
まず無効になるケースとして挙げられるのが、本人が書いていないときです。そもそも遺言書には、大きく分けて次の種類があります。

遺言書の種類:方法
・自筆証書遺言:自筆で内容を記載、署名捺印する
・公正証書遺言:公証人が遺言者の代わりに作成する
・秘密証書遺言:遺言の内容がわからないように封緘する


遺言者自身で作成しなければならないのは、自筆証書遺言書と秘密証書遺言書です。自筆証書遺言書は全文を手書きで作成する必要があり、代筆やワープロの使用は認められていません。一方で秘密証書遺言書は、ワープロやパソコンの使用が認められています。

公正証書遺言は証人2人の立会いのもと、本人ではなく公証人が遺言書を作成する方式です。しかし配偶者や推定相続人など、本人と近しい間柄の者は証人として立会いできません。


◯遺言者が内容を理解していない場合
遺言書が無効と判断される要因として、遺言者が内容を理解していない場合も挙げられます。主に該当するのが、遺言者が重度の認知症を患っていたり、泥酔していて判断力を欠いていたりするときです。

そもそも遺言を残すには、以下に示した遺言能力が必要とされます。

・満15歳である
・意思能力を有する

意思能力に焦点を当てると、これまでも認知症を患っていたために遺言を認めなかった事例がいくつかありました。ケースによっても判断は変わりますが、一般的には精神医学的な観点と遺言の内容が複雑かどうかで判断されます。

また遺言者が成年被後見人の場合でも、一時的に事理弁識能力が回復すれば遺言が認められることもあります。この事例においては、医師2人以上の立会いが必要です。

医師が遺言書に「遺言当時は事理弁識能力が回復していた」旨を記載すれば、問題なく効力が発揮します。


◯偽造や変造の疑いがある場合
偽造や変造の疑いがあるときも、遺言書が無効となりうるケースに該当します。まず偽造とは、偽物の遺言書を作成する行為のことです。自筆証書遺言書であり、以下の状況に当てはまる場合は偽造を疑ったほうがよいでしょう。

・筆跡が明らかに本人のものとは異なる
・内容が特定の相続人に対して有利である
・作成年月日が意思疎通できなくなった日以降となっている
・文章の書き方や言葉遣いに違和感がある

一方で変造とは、本人によって作成された遺言書が別の誰かによって書き換えられている状態です。たとえば父親が作成していた遺言書を、息子が偶然見つけたとしましょう。息子がその内容を良く思っておらず、自分がより多くの財産を受けられるように書き換えたケースが当てはまります。

遺言書の内容を変更できるのは、遺言者本人にのみ認められた権利です。訂正箇所が他人の筆跡であったり、文字の濃淡が変わっていたりする場合は注意してください。

なお遺言書の偽造や変造をした人は、刑法の「有印私文書偽造罪」で処される恐れがあります。犯罪行為であるため、絶対におこなわないようにしましょう。


●遺言書が勝手に作成された場合の対処方法
遺言書が無関係者によって作られた疑いのある場合、なるべく早めに対処することが大切です。ただし必要な準備をしなければ、問題が解決するまで時間がかかってしまいます。

ここでは勝手に作成された遺言書を無効にする方法を解説します。自分自身でも対処法を押さえつつ、プロの弁護士にも協力してもらいましょう。


◯遺言無効確認訴訟
方法の一つとして挙げられるのが、遺言無効確認訴訟の提起です。当該訴訟を提起する前に、まずは家庭裁判所に家事調停を申し立てる必要があります(家事調停前置主義)。

仮に家事調停で問題を解決できなかった場合、手続きは遺言無効確認訴訟へ移ります。訴訟に関しては、家庭裁判所ではなく地方裁判所で提起するため間違えないようにしてください。

訴訟に必要な書類は、次のとおりです。

・遺言書
・戸籍謄本(相続開始日や相続人の範囲がわかるもの)
・相続関係図
・登記事項証明書や通帳の写しなど

遺言確認無効訴訟で勝訴すれば、元々遺言はなかったとみなされて相続が開始されます。他に遺言書がない場合は、遺産分割協議による決定も可能です。

一方で訴訟に敗れてしまった場合、遺言書は変わらず効力を発揮します。自分たちの主張が認められるには、入念に調査しなければなりません。素人だけで戦うのは難しいため、必ずプロの弁護士からアドバイスをもらうようにしましょう。


◯証拠の確保
遺言書の効力をなくすには、客観的かつ決定的な証拠を集めることが大切です。有力な証拠の例として、以下のものが挙げられます。

・筆跡鑑定で本人の筆跡と異なることを証明する
・作成年月日に重度な認知症を患っていた、意思能力がなかった証拠を用意する(介護日記や医療記録がおすすめ)
・本来は想像できない場所から遺言書が発見されたときは当時の状況を示した記録

具体的な証拠が集まらなかったとしても、遺言無効確認訴訟での証言で主張が認められる可能性もあります。なぜ遺言書の偽造や変造を疑っているのか、しっかりと証言できるように準備してください。


◯相続欠格
相続欠格とは、欠格事由に該当する相続人の相続権を奪う制度のことです。

相続人が遺言書を偽造・変造した場合も、相続欠格に該当します(民法891条5号)。そのため仮に特定の相続人が自分に財産が行き渡るように改ざんしても、結果的に相続権を失うこともあります。

民法上は、条件に該当すれば訴訟を起こさなくとも相続欠格の適用は可能です。とはいえ本人にとっては権利を奪われる形となるので、相続欠格に該当する行為をしたことを、素直に認めるとは考えづらいでしょう。

相手の相続権を認めたくないのであれば、地方裁判所へ「相続権不存在確認訴訟」を提起するのをおすすめします。弁護士からのアドバイスも参考にしつつ、勝訴できるように準備しましょう。

遺言書を改ざんした者の相続欠格が認定されたら、当該人物を除いて相続手続きをしてください。ただし相続欠格は戸籍には登録されないため、事前に「相続欠格証明書」を提出する必要があります。


●遺言書が無効にならないための予防策
遺言書は、被相続人の意思を主張する重要な制度です。内容を確実に反映させるには、無効にならないための予防策を立てなければなりません。ここでは具体的な予防策として、公正証書遺言と自筆証書遺言保管制度について取り上げます。

◯公正証書遺言の利用
上述したとおり遺言書には3種類ありますが、トラブルを防げる点で公正証書遺言がおすすめです。当該方法では本人が相続方法を口頭で伝え、その内容を公証人が書面に起こします。主なメリットは、次のとおりです。

・不備が生じにくい
・経験豊富な公証人により内容を整理できる
・自らが遺言書を作成しなくてもよい
・偽造、変造のリスクを防げる
・原本が役場に保管される
・検認を得る必要がない
・証人2人の立会いで信頼性を高められる

分配方法を明確に決めているのであれば、具体的な内容をメモに起こしてください。メモを提出すれば、公証人側に意図が伝わりやすくなります。

公正証書遺言は、相続財産の価額に合わせて手数料が発生します。具体的な金額はこちらです。

公証人手数料令第9条別表より一部抜粋)
財産の価額:金額
100万円以下:5,000円
100万円超〜;;;;200万円以下:7,000円
200万円超〜;;;;500万円以下:1万1,000円
500万円超〜;;;;1,000万円以下:1万7,000円
1,000万円超〜;;;;3,000万円以下:2万3,000円

「3,000万円超」以降の金額については、公証人手数料令第9条別表を参照してください。


◯自筆証書遺言保管制度
自筆証書遺言を残したい人であれば、令和2年から始まった自筆証書遺言保管制度の利用も検討してください。当該制度を使うと、自筆証書遺言書が法務局に保管されます。紛失したり、第三者に改ざんされたりするリスクを防げます。

一般的に自筆証書遺言書を作成するときは、家庭裁判所の検認手続きを経ないといけません。相続人に遺言書の存在を把握させ、偽造・変造を防止するためです。

一方で上述したとおり自筆証書遺言保管制度を使えば、第三者によって偽造・変造される恐れはありません。したがって家庭裁判所による検認も不要とされています。

自筆証書遺言保管制度の手数料は、1件あたり3,900円です。遺言書を自筆で書かないといけませんが、公正証書遺言書よりも価格は低めに設定されています。

自筆証書遺言書の原本は、管轄の法務局にて保管されます。ただしデータは全国の法務局共有となり、どこでもデータの閲覧および証明書の発行が可能です。


●まとめ
遺言は、今まで大切にしてきた財産を自身の望む形で相続させるための手段です。しかし遺言書が勝手に作成されると、相続手続きにおいて重大なトラブルが発生しかねません。

遺言書に偽造や変造の疑いがある場合は、証拠を押さえたうえで争うことも大切です。その際には、相続手続きに強い弁護士を味方につけるのをおすすめします。

もめ事をなくすには、自身でも予防策を立てないといけません。公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度も上手く活用しつつ、遺言書を厳重に保管してください。



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