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遺言書が後から出てきた場合の対処法と遺産分割のやり直しについて解説


遺産分割時において、相続人らが負担に感じる状況の一つが後から遺言書を発見したときです。基本的に遺産分割がやり直しとなるため、面倒と思う人も一定数いるでしょう。

しかし遺言書を無視していると、相続手続きがさらに煩雑になってしまいます。相続人同士で揉めるきっかけにも繋がりかねません。

この記事では相続によるトラブルを防ぐべく、遺言書が後から出てきたケースでの対処法を解説します。相続人となる人は記事を参考にして、もしもの事態に備えてください。

●遺言書が後から出てきた場合どうなる?
遺言書が後から出てきた場合、基本的には被相続人の遺言が優先されます。相続においては、亡くなった人の意思を尊重するのが原則であるためです。

当該原則をできる限り守るべく、遺言書には時効がありません。そのため10年以上経ってから遺言書が発見されたとしても、効力に問題がなければ遺産分割がやり直しになる可能性もあります。

ただし相続人全員の同意があれば、遺言の内容に従わないことも可能です。遺産分割から年月が経ってから有効な遺言書を見つけたら、まずは相続人全員の同意を得られるかがポイントとなるでしょう。

●遺言書の有効性を確認するポイント
遺言書を発見した際には、その有効性を確認しましょう。無効と主張できる要素があれば、遺産分割にも特に影響がないからです。どういったポイントをチェックしたほうがよいかを解説します。

◯被相続人に遺言能力があるか
まずチェックすべきポイントが、被相続人に遺言能力があるかどうかです。遺言を残すには「満15歳以上」「意思能力を有する」が条件とされています。

相続関係で特に重視されるのが、被相続人の意思能力の有無です。判断能力が重点の一つとなりますが、認知症を患っていただけでは遺言が無効とは言い切れません。

民法上では成年被後見人でも、事理弁識能力が一時的に回復すれば医師2人の立会いのもとで遺言できると規定されています(第973条)。

さまざまな角度から判断されるため、遺言書の効力におけるジャッジは極めて複雑です。有効性については、弁護士に相談したうえで判断するのをおすすめします。

◯民法の規定どおりに作成されているか
遺言書には、大きく分けて3つの種類が存在します。これらは民法にも規定されており、条件を満たしたうえで作成しなければなりません。

自筆証書遺言書
・日付、氏名、押印がある(自書で)

公正証書遺言書
・証人2人以上の立会いがある
・本人と公証人が各自署名捺印している
※公証人が作成するため、ミスする確率は極めて低い

秘密証書遺言書
・本人の署名捺印がある
・印章によって封印されてある
・公証人1人および証人2人に提出されたある(自身の遺言書であること、自身の氏名や住所を申述している)
・公証人が封紙に日付と遺言の申述を記載後、本人および証人が署名捺印している

遺言書の形式を押さえつつ、これらの条件が守られているかをチェックしてください。

◯被相続人本人によって作成されているか
遺言書の中には、第三者によって偽造されているケースも全くないとはいえません。本人によって作成されているかを入念に調べる必要があります。

公正証書遺言書や法務局に提出された遺言書は、基本的に本人が作成されたものと判断してよいでしょう。一方で法務局に届けられていない自筆証書遺言書または秘密証書遺言書には注意が必要です。

本人かどうかを調べるうえでは、筆跡鑑定が役立ちます。遺言書全般の調査も踏まえ、弁護士に一任するのをおすすめします。

◯遺言の内容に問題がないか
遺言書が見つかったとしても、その内容に問題があれば無効になる可能性もあります。主な例として挙げられるのが、内容があまりにも不明確なときです。

裁判例によれば、たとえ遺言書の意図が少々不明でも、できる限り真意を解釈すべきと判断しています。つまり司法側は、極力遺言書に効力を持たせようとします。どうしても意図が読み取れない場合に限り、無効になることもあると覚えておきましょう。

また真意を理解できても、内容が公序良俗に反すると遺言書が無効になるケースもあります。例えば不倫相手に財産を譲渡したり、遺贈が相続人に大きな損失を招いたりするときです。

ただし公序良俗に反するかどうかも、裁判所によってジャッジが変わることも考えられます。判断が難しい場合は、遺言書を弁護士に預けてもよいでしょう。

◯遺言作成が錯誤、詐欺、強迫に該当しないか
遺言作成も、被相続人による意思表示の一つです。意思表示が有効となるには、意思と行為の内容が一致しており、かつ意思の形成に欠陥がないことが求められます。

したがって遺言を作成したきっかけが、次の要素に当てはまる場合は無効になる可能性があります。

・錯誤
会社Aが子どもに財産を分配すると勘違いして、Aに遺贈すると記載した

・詐欺
第三者が子どもに利益を与えるとそそのかし、全財産を自分へ遺贈するよう遺言書を作成させた

・強迫
子どもが被相続人を脅し、自分に全財産を譲る旨の遺言書を作成させた

しかしこれらの事由が原因で、遺言を無効にした例は数えるほどしかありません。被相続人は亡くなっていることから、事実関係の確認も困難です。ひとまず錯誤・詐欺・強迫の存在を覚えておき、遺言書の内容に違和感があったら弁護士への相談を検討しましょう。

●相続後に遺言書が見つかった場合
先程も述べたとおり、相続後に遺言書が見つかったら遺産分割をやり直すのが原則です。しかし財産は一度相続人らに分配されているため、必ず残っている保証はありません。

中にはギャンブルで使い込んでしまい、財産がほとんど残っていない相続人もいるでしょう。そのため遺産分割をやり直すと、一部の人のみが損する恐れもあります。そこで相続人全員から同意をもらい、現在の状態を維持するのが一般的です。 

●遺産分割のやり直しが必要なケース
相続人全員の同意を得ても、次の場合には遺産分割のやり直しが必要になるケースもあります。

遺言執行者が指定されている
法定相続人以外の者へ遺贈する旨がある
遺言書を相続人が隠匿した

それぞれのケースにおいて、どのような対応が求められるかを詳しく紹介しましょう。

◯遺言で遺言執行者が指定されている場合
遺産分割のやり直しが必要になる条件の一つに、遺言執行者が指定されている場合が挙げられます。遺言執行者とは、遺言の効力を発揮させるための権利義務を担う人です。

必ず選ばないといけないわけではありませんが、被相続人の意向により指定されることもあります。遺言執行者の指定も被相続人の意思であるため、原則として守らなければなりません。

ただし遺言執行者が遺産分割の内容に承諾したとき、改めてやり直す必要はなくなります。法律行為を後から認めることを追認と呼びますが、まずは追認してもらえるかどうかを確認しましょう。

◯遺言に法定相続人以外の者への遺贈が記載されている場合
被相続人が所有していた財産の一部を、法定相続人以外の者へ遺贈する旨が記載されているときも遺産分割のやり直しが必要です。遺贈とは自身が死亡してから効力が発生する贈与を指し、相続人以外にも財産を譲渡できるメリットがあります。

遺言書の存在に気付かず、遺産分割を行えば遺贈するはずの分も相続人に分配されているはずです。被相続人の意向に背くため、この場合には遺産分割をやり直さなければなりません。

また相続放棄した親族に対する遺贈も有効です。仮にこうした記載がなされていたら、対象の親族が相続放棄しても遺産分割を改めてする必要があります。相続と遺贈は混同しやすいですが、両者のルールの違いを区別してください。

◯遺言書を相続人が隠匿していた場合
相続人の一人が遺言書を隠していた場合も、遺産分割のやり直しが必要となる条件の一つです。法定相続と異なり、遺言は相続人全員が平等に財産分配されるとは限りません。そのため相続で不利になる者が、腹を立てて遺言書を隠してしまうケースも考えられます。

しかし遺言書を隠す行為は、相続における欠格事由に該当します。つまり相続人の隠匿行為が発覚した場合、その人物を除いて遺産分割をやり直さないといけません。

遺言書を隠匿することは、民事だけではなく刑事事件に発展する恐れもあります。また相続人全員にとっても多大な迷惑をかけてしまう行為です。自分にとって不利な内容が記載されていても、遺言書を見せたうえで話し合うようにしてください。

●遺言書が後から出てきた場合は弁護士に相談
遺産分割が終わったあとに遺言書が出てきたら、迷わず弁護士に相談したほうが賢明です。仮に遺言書が見つかっても、それが有効かどうかを判断するのは簡単ではありません。深く考えずに無視すると、より大きなトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。

弁護士に依頼すれば遺言書の有効性のチェックのみならず、これからどう行動すればよいかをアドバイスしてくれます。遺贈などで第三者が関わるときも、代わりに交渉してくれるのも強みです。

近くに法律事務所が複数あったとしても、それぞれ得意とするジャンルが異なります。そのため弁護士に相談したい場合は、あらかじめ相続に強い法律事務所を探すようにしてください。

●まとめ
親族が亡くなったあとは、葬儀や行政の手続きなどやるべきことが数多くあります。遺品整理にじっくりと時間をかけられず、遺言書を見つけるのが遅れるケースも珍しくはありません。

ただし遺言書の有無は、被相続人に関わる全ての人にとっても重大な事柄です。遺産分割後に見つかったのであれば、なるべく円満に解決できるよう動かないといけません。

状況によっては、遺言書の発見が遅れたことで訴えを提起されるリスクもあります。未然にトラブルを防ぐべく、相続に強い弁護士へ早めに相談しましょう。



藤沢市、鎌倉市、茅ケ崎市近郊で、遺産分割に関してお困りでしたら弁護士松永大希(藤沢かわせみ法律事務所)までご連絡下さい。

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