遺言書は、遺産分割の際に大きな影響力を持ちます。
遺言書の効力についてはたびたび争点になりますが、そもそも遺言書に有効期限はあるのでしょうか。
この記事では、遺言書の有効期限と効力を失うケースについて解説します。
一度作成した遺言書をそのまま放置することで招くトラブルについても解説しているので、これから遺言書を作成予定の方、または遺言書を作成してから長い年月が経っている方は、ぜひ参考にしてください。
●遺言書に有効期限はない
遺言書には法的な有効期限が設けられていません。
遺言者が作成した遺言書が一度有効となれば、一定の期間が経過したからといって、その有効性が失われることはありません。
遺言書は、遺言者の最終的な意思を明確に示し、後世に残す重要な法的文書です。
そのため、一度有効となった遺言書は、基本的には永続的に尊重されるべきものと位置づけられているのです。
時間の経過とともに、遺言書の内容が陳腐化したり、前提条件が変化したりする可能性はあります。
しかし、そうした場合でも、遺言書自体の有効性が自動的に失われるわけではないのです。
●遺言書が効力を失う2つのケース
遺言書に有効期限はありませんが、以下のケースでは実質効力を失います。
◯新しい遺言書を作成した
遺言者が複数の遺言書を作成した場合、最新の遺言書の内容が優先されることになります。
具体的には、以前に作成された遺言書の記載内容と、新しい遺言書の内容が矛盾する部分については、最新の遺言書の内容が有効となります。
つまり、古い遺言書の抵触する部分は、効力を失うことになるのです。
これは、遺言者の意思変更を最大限尊重するための措置です。
遺言者の意思が最新のものに集約されるため、最新の遺言書の内容が正当なものとして扱われます。
◯公正証書遺言の保管期間を過ぎる
法律では、公証役場による公正証書遺言の保管期間は基本的に20年と定められています。
この保管期間を過ぎると、原本が失われてしまいます。
遺言者が公正証書遺言を作成した際、公証役場から交付されている写しを保管していれば、20年経過後も遺言の内容を確認することが可能です。
しかし、写しを紛失し、さらに公証役場での原本保管期間も経過してしまった場合、遺言の内容を確認することはできません。
ただし、遺言者が生存している場合など、特別な事情がある際は、この保管期間が延長される可能性があります。
中には、遺言者の120歳に達するまで保管し続ける公証役場もあります。
●遺言書が古すぎることによる問題点
将来に備えて、早めに遺言書を作成しておく方もいらっしゃるでしょう。
遺言書に有効期限はないため、たとえ20年前に書かれたものだったとしても有効です。
しかし、遺言書が古すぎても、かえってトラブルを招く可能性があります。具体的な問題点をご紹介します。
◯相続人が変わっている
遺言書が古すぎることで起こる問題の一つが、相続人が変わっている可能性があるということです。
遺言書の作成から長い年月が経過していると、遺言書作成時に指定された相続人の中に、すでに亡くなっている人がいる可能性があります。
また、法定相続人の範囲が広がり、新たに相続分の主張ができる人が出てくるケースもあり得ます。
通常、遺言書の作成時には、法定相続人の相続分や遺留分といった要素を考慮し、トラブルのない形で遺産分割が行われるよう配慮するものです。
しかし、遺言書に記載された相続人と、実際の相続人が異なっていては、遺言書の内容どおりに遺産を分割することは難しくなります。
この結果、遺言書が存在するにもかかわらず、遺産分割をめぐるトラブルが発生してしまう恐れがあります。
相続人の変化に合わせて、遺言書の内容を見直すことが重要となるのです。
◯財産内容に変更がある
相続人の変化の他に、遺産の内容が変わっている可能性があることも注意が必要です。
遺言書作成時には、どの財産をどの相続人に分割するかが明記されます。
しかし、長年月が経過すると、その時点では存在していた財産が既になくなっていたり、新たに取得した財産について触れられていなかったりする可能性があります。
さらに、同じ財産でも、時間の経過とともに価値が大きく変動してしまうことがあります。
例えば、不動産の場合、遺言書作成時と相続時では、その物件の所在地の開発状況や周辺環境の変化によって大幅に価値が上下する可能性があります。
有価証券の価値変動も同様です。
その結果、古い遺言書の内容を踏まえて遺産分割を行うと、相続人ごとの取り分に大きな差が生じ、トラブルが引き起こされる可能性があります。
●遺言書が無効になるケース
遺言書は原則、遺言者の死亡から効力が生じますが、すべての遺言書が有効と認められるわけではありません。
正しい形式で書かれていないと、無効と判断される可能性があります。
・自筆ではない
・日付が明記されていない
・署名・押印がない
・内容が不明確
・正しい方法で訂正されていない
・共同で書かれている
・遺言能力がない
・詐欺や脅迫によって書かされた
・立ち会いの証人が不適格者だった
上記のようなケースでは遺言書が無効となってしまいますので、気をつけましょう。
●まとめ:古い遺言書は書き換えも検討しよう
早いうちに遺言書を作成しておくことは大事ですが、古くなった遺言書がそのまま効力を持った場合、かえってトラブルを招きかねません。遺言書に記載された内容は時間とともに古くなっていきます。
そのため、定期的に遺言書の内容を確認・修正することが重要です。
あるいは、遺言書に記載する内容を、時間の経過に左右されにくい一般的な事項にすることで、頻繁な見直しが不要になる可能性もあります。遺言書を作成してから時間が経っている方は、一度見直してみてはいかがでしょうか。
当社は相続に関する事前相談を無料で実施しております。遺言書についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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