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親の借金は相続放棄できない?支払いの義務は誰にある?


相続に関するトラブルのひとつに挙げられるのが、相続債権者との関係です。親が多額の借金を抱えたまま死亡し、相続人に請求されるケースも少なからずあります。

「親が亡くなったものの、負債が多いので相続したくない」

このような思いを抱えている人もいるでしょう。この記事では、親の借金を相続放棄できるかどうかについて解説します。大切な手続きとなるので、内容をしっかりと押さえてください。


親の借金は相続放棄できない?
相続放棄とは、被相続人の資産と負債の全てを引き継がないという意思表示です。したがって親の借金も、相続放棄の対象になります。家庭裁判所に申請したあと、無事に受理されたら借金を背負う義務は発生しません。

しかし相続放棄には、メリットだけではなくデメリットも存在します。これらを比較したうえで、どちらの選択が望ましいかをじっくりと考えることが大切です。

相続放棄をするメリット
相続放棄のメリットには、次の3つが挙げられます。

・負債を抱える必要がなくなる
・遺族と揉める恐れがなくなる
・家族と疎遠の相続人にも便利

まず一番のメリットは、負債を引き継ぐ必要がなくなる点です。家庭裁判所から送られる受理証明書を保管しておけば、相続債権者から催促もされません。相続人も自分の生活を優先させる権利があるので、あまりにも借金の額が大きい場合は相続放棄を選ぶのも有効です。

また相続人の中には、家族との仲が元々良好ではない人もいるでしょう。民法には各相続人が貰える相続分の目安がありますが、実際には遺産分割協議や遺言で細かく決められます。遺産分割協議は全員が出席しないと無効になるため、相続する際には家族とも関わりを持たないといけません。相続放棄をすれば、遺産分割協議に出席する必要もなくなります。

相続放棄をするデメリット
一方で相続放棄には、以下のようなデメリットも挙げられます。

・資産を引き継ぐ権利もなくなる
・相続放棄は原則として撤回できない
・後順位の相続人に迷惑がかかることも

特に注意しなければならないのが、資産も引き継げなくなることです。はじめは負債が多いと思っても、財産調査を行ったら被相続人がより多くの資産を持っている場合もあります。相続放棄は、一度申請が受理されると原則として撤回できないので慎重に手続きを行わないといけません。

なお負債が多かった場合、相続放棄を選ぶことで後順位の相続人に迷惑がかかるケースも考えられます。民法では、相続の権利が得られる順番を規定しています。

順位:(被相続人から見た)相続人
第一順位:子(配偶者の相続分は1/2)
第二順位:父母(配偶者の相続分は2/3)
第三順位:兄弟姉妹(配偶者の相続分は3/4)

つまり子ども全員が相続放棄をすると、負債は第二順位の被相続人の父母に移るわけです。このようにほかの親族にも、負債を抱えさせる可能性があります。

親の借金を子供が支払う義務
親が借金を返済できないとき、子どもにも返済義務があるのではと思う人もいるでしょう。ここでは「親が生存している場合」と「死亡している場合」の2つに分けて解説します。

親が生存している場合
親が生存している場合、民法のルール上は子どもに返済義務はありません。しかし家計のために借金を作っており、子どもも働ける年齢なら「家族」としての問題にはなるでしょう。こういったケースであれば法律上は親の責任でも、便宜上は家族で協力するといった形にはなります。

一方で、親の借金に対して子どもが保証人(連帯保証人)になっていたら法律上も返済義務を負います。特に連帯保証人の場合は、債権者の催促に対して抗弁権がありません。そのため債権者から直接弁済を要求されたら、返済に応じる必要があります。

親が死亡している場合
親が死亡しているケースにおいて、借金を支払う義務が子どもに発生するのは負債を相続したときです。子どもが複数人いる家庭では、法定相続分に従って責任の割合が決められます。

例えば母親はすでに亡くなっており、先日父親が1,000万円の負債を残したまま亡くなったとしましょう。もし父親に子どもが2人いれば、それぞれの法定相続分は1/2ずつとなります。したがって通常は、子ども1人あたり500万円を返済しなければなりません。

一方で片方が相続放棄をし、もう片方が財産を引き継いだと仮定します。この場合は、負債を全て1人で相続した形となるため、返済すべき金額も1,000万円です。

債権者から親の借金を取り立てられた場合
お金を貸している債権者が返済されない状況に苛立ちを感じ、子どもに対して弁済するように迫ることもあるかもしれません。このような状況に陥ったときも、親が生存しているか否かで扱いが異なります。

親が生存している場合
先程も説明したとおり、親が生存しているのであれば子どもに返済義務はありません。もし債権者が子どもに弁済を迫ったとしても、その行為が法律違反であるためしっかりと拒みましょう。

貸金業者が債権者の場合は、貸金業法が適用されます。貸金業法第21条1項7号では、貸金業者が債務者以外の人物から弁済を要求するのを禁じています。また債務者以外の者に対し、債務者に返済させるよう協力を求めてもいけません。このルールに反すると、2年以下の懲役や300円以下の罰金の対象となります。

債権者が一般人であれば、貸金業法は適用されません。しかし子どもに返済を迫るのはどちらにせよ禁じられており、民事訴訟でも争える事案です。主な方法として、以下の4通りが挙げられます。

訴訟(処分)の種類:内容
債務不存在確認訴訟:自身に負債がないことを主張する訴訟
面会禁止の仮処分:本人と交渉せず、代理人(弁護士など)を通させる裁判所からの処分
損害賠償請求訴訟:不当な弁済の要求による精神的苦痛の損害賠償を求める
刑事告訴:脅迫や恐喝、暴行の事実があったときに刑事的な処罰を求める

弁済を執拗に迫られているのであれば、弁護士に依頼して法的措置を検討してみるのもよいでしょう。

親が死亡している場合
親が死亡している場合、相続で財産を引き継ぐと弁済義務が生じます。仮に不動産などの資産を売却し、手元に借金を返せるほどの資金があったら相続を選んでもよいかもしれません。弁済がきちんとなされれば、債権者にとっても最良な解決法となるためです。

細かく財産調査すると、親に過払い金が生じている可能性もあります。弁済の負担が軽減される可能性もあるので、しっかりと財産の状況を調べることが大切です。

それでも負債があまりにも多いのであれば、相続するメリットはほとんどありません。そこで相続放棄や限定承認などを行います。限定承認とは、負債の範囲で資産を引き継ぐ方法です。一部だけ弁済したいときに使われます。

相続人がこれらの手段を選んだら、一部もしくは全部の返済義務がなくなります。当然ながら債権者は、返済義務がなくなった分を催促できません。相続放棄または限定承認をしたにもかかわらず、返済を迫られたら同じく法的措置を検討してください。

親の借金を確認する方法
財産調査を行っても、借金をしているかどうかは簡単に見つかるものではありません。地道に調査を続け、借金の事実が明記された資料を探す必要があります。ここでは、一般的に負債の状況を確認する方法について紹介しましょう。

全国銀行個人信用情報センターに照会
親が銀行からお金を借りているのであれば、全国銀行個人信用情報センター(KSC)に照会を行います。パソコンやスマホから簡単に開示請求できます(郵送も可)。インターネットでの手続きの流れは、以下のとおりです。

・「本人開示WEB申込」から「本人開示を申込む」をクリック
・利用規約に同意してメールアドレスを入力・送信
・開示したい情報を入力
・オンライン上で顔写真付きの本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)を提出
・決済サイトに移り手数料を支払う(1,000円)
・開示報告書をダウンロード

開示報告書はアップロード日から10日、申請日から1カ月を過ぎるとダウンロードできません。手続きが完了したら、すぐにダウンロードを行ってください。

信用情報機関に照会
クレジット会社や消費者金融からの借金は、次の信用情報期間に開示請求を行います。

信用情報機関:借入先
株式会社シー・アイ・シー(CIC):クレジットカード会社、信販会社
株式会社日本信用情報機構(JICC):消費者金融

双方の機関とも、開示請求は郵送とインターネットの両方で可能です。手続きの流れも大きく変わりませんが、手数料がそれぞれ異なります。

(インターネットでの開示請求)
株式会社シー・アイ・シー(CIC):500円
株式会社日本信用情報機構(JICC):1,000円

どちらも郵送では手数料が高くなるので、可能であればインターネットで手続きするとよいでしょう。

親が個人からお金を借りている可能性を考慮し、自宅の調査も念入りに行わないといけません。借用書や金銭消費貸借契約書、手帳の記録の有無を調べましょう。

また債権者は、相手の支払いが滞っていると督促状を送付します。そのため郵便受けも忘れずに確認することが大切です。親宛てに留守番電話が入っていたら、メッセージの内容を記録してください。

書類を整理している場所など、家族だからこそ分かる部分もあるはずです。弁護士に任せきりにはせず、自らも積極的に調査を行いましょう。

まとめ
親が借金を抱えたまま亡くなったとしても、相続放棄すれば支払い義務は残りません。相続放棄にもメリットとデメリットがあるので、財産やほかの相続人の状況も考慮して決めるとよいでしょう。

正しい判断をするうえでは、債務状況を入念に確認する必要があります。自らも財産調査を積極的に行いつつ、過払い金の計算など専門性が高い部分は弁護士に頼るのをおすすめします。



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