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連帯保証人の相続放棄はできない?相続放棄をする際の注意点を解説


「親が亡くなったあとに連帯保証人であることが発覚したものの、相続放棄はできるの?」

相続人の中には、上記のように疑問を抱いている人もいるでしょう。
この記事では、こうした疑問を抱える相続人に向けて連帯保証人と相続放棄の関係性を解説します。

手続きの方法や注意点についても併せて理解できる記事です。記事の内容を参考にしつつ、弁護士にも依頼しながら相続放棄の手続きを進めてください。



連帯保証人や相続放棄とは?
まず連帯保証人が相続放棄できるかを説明する前に、それぞれの言葉の意味を正しく押さえる必要があります。これらの用語を詳しく紹介するので、意味を理解した上で記事を読んでください。

連帯保証人とは?
連帯保証人とは、主債務者が借金を払えない際に肩代わりする人のことです。

例えば、Aさんが消費者金融からお金を借りたとします。このときBさんがAさんの連帯保証人になったと仮定しましょう。もしAさんが資金繰りに困って借金を返せない場合、Bさんが代わりに利子分も含めて返済しないといけません。

また連帯保証人は、通常の保証人と異なり以下のような制限もあります。

・催告の抗弁権がない
・検索の抗弁権がない

通常の保証人は消費者金融(債権者)から返済を求められても、主債務者に催告するよう抵抗できる権利があります(催告の抗弁権)。加えて主債務者に資金があった場合、財産の状況を確認するように拒むことも可能です(検索の抗弁権)。

しかし連帯保証人には、これらの権利が認められていません。したがって連帯保証人は、通常の保証人よりも自身が弁済する可能性は高くなります。

相続放棄とは?
相続放棄とは、相続財産を一切引き継がないとする意思表示のことです。相続の発生を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きすれば効力が発動します。

相続放棄を行う理由として挙げられるのが次のとおりです。

・借金(負債)が多い
・被相続人と縁を切っている
・家族(兄弟も含めて)と関わりを持ちたくない

効力が発生すれば、手続きした人物の配偶者や子どもも相続権を持ちません。このように相続放棄は絶対的な効果を持ち、相続財産の債権者にも対抗できるのが特徴です。

連帯保証人の相続放棄はできる
結論から述べると、被相続人が連帯保証人でも相続放棄は可能です。相続放棄は、財産のみならず債務の承継を放棄します。この制度は、被相続人が連帯保証人の場合でも問題なく適用されます。

仮に被相続人が経営者や事業者だったときは、相続する前に連帯保証人となっていたかを慎重に調べましょう。被相続人の状況を把握していない人も珍しくなく、知らずに相続してしまうと大きな負債を抱える恐れがあります。

親が連帯保証人の場合は借金も引き継がない
連帯保証人は、主債務者とともに借金を背負っている状態です。仮に親が連帯保証人であり、そのまま相続してしまったら相続人が負債を抱えながら過ごさないといけません。そこで相続放棄をすれば、親の抱えていた借金も引き継ぐ必要がなくなります。

もし家族構成が父(死亡)・母・子ども2人の場合、本来の相続分は配偶者である母が2分の1、子どもたちは4分の1です。しかし子どものどちらかが相続放棄したら、母が2分の1と子ども(片方)2分の1に相続分が変わります。

仮に配偶者と子ども全員が相続放棄をすると、第二順位である父親の両親(子から見た祖父母)が相続人となります。相続の順位について、下記にまとめてみました。

相続の順位
第一順位:
第二順位:父、母
第三順位:兄弟姉妹


相続放棄する際には、こちらの関係も一緒に押さえておくとよいでしょう。

相続放棄の手続きについて
相続放棄は、自らが家庭裁判所で手続きしないと効力を発揮しません。ここでは、手続きの手順について紹介します。

1,書類を用意する
相続放棄をするには「相続放棄申述書」の提出が必要です。この用紙に加えて、以下の添付書類も併せて用意しなければなりません。

・被相続人の戸籍附票または住民票除票
・申述する人の戸籍謄本
・被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本

他にも、相続人の状況によって追加で提出が必要となる書類もあります。一式を一回で揃えられるように、最寄りの弁護士や司法書士と相談しておくとよいでしょう。

2.家庭裁判所へ申立てする手続きを行う
書類を一式揃えたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。主な提出方法としては、以下の3点が挙げられます。

・自らが家庭裁判所の窓口に持参する
・郵送で提出する
・弁護士に代理で提出してもらう

家庭裁判所の窓口は、基本的に平日しか受付していません。細かい時間帯は地域によっても異なりますが、9時から16時が原則です。

郵送であれば窓口の時間帯を気にする必要はありませんが、書類が届くまで1から2日程度かかります。書類の不備も考慮しないといけないので、なるべく余裕を持って送付しましょう。

また弁護士であれば、本人に代わって相続放棄の手続きが可能です。なお司法書士は弁護士のような代理権が認められず、本人の代わりに書類の提出ができないので注意してください。

3.照会書に記入して返信する
相続放棄申述書と添付書類を提出すると、家庭裁判所から照会書が送られます。照会書の目的は、申述人の状況を具体的に把握することです。そのため申述人は、以下の質問に答える必要があります。

・どのように被相続人の死亡を知ったか
・自分の意思で相続放棄をしているか
・相続放棄を選んだ理由

照会書の提出期限は、相続放棄の期限と同じ(被相続人の死亡を知ったときから3カ月以内)です。こちらの書類を提出しなければ、相続放棄は認められないので注意しましょう。

4.受理通知書が届く
相続放棄が認められたら、家庭裁判所から受理通知書が届きます。この時点になって、はじめて手続きの一切が終了します。受理通知書が届くまでの間、家庭裁判所から追加で書類の提出を求められる場合もあります。

受理通知書は、基本的に再発行できません。紛失した場合は、手数料(150円)を支払って相続放棄受理証明書を取り寄せれば証明手続きに使えます。


連帯保証人の相続放棄をする際の注意点
連帯保証人(被相続人)の相続放棄をする場合も、注意すべきポイントがいくつかあります。ここで紹介する内容は、特に押さえたうえで手続きを行ってください。

故人の遺産は相続できない
まず押さえてほしいポイントは、連帯保証人の立場だけを放棄するのは認められない点です。相続放棄を選んだら、資産と負債の双方が相続できなくなります。

したがって被相続人の遺産についても、原則として相続できません。相続放棄を選択する前に、財産の状況を詳しく調べることが大切です。

相続放棄の期限は3ヶ月以内
相続放棄の期限は、被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内と定められています。期限を過ぎてしまうと、相続放棄が認められなくなります。上述したように、手続きをする際には多くの添付書類も必要です。これらの書類を揃えるのは時間がかかるため、早めの準備を心がけましょう。

ただし起算点となるのは「被相続人の死亡を知ったとき」です。家族と連絡を全く取っておらず、死亡したのを認識していない間は期限がスタートしません。

もし死亡日から大幅に遅れて手続きすると、家庭裁判所から理由を聞かれる場合があります。そのときは、被相続人の死亡に気付かなかったことを説明しましょう。

契約書がない場合は無効になることもある
契約書がない場合、連帯保証人の立場を相続しても契約自体が無効になるケースもあります。なぜなら保証契約は、書面か電磁的記録で交わさないと効力を発揮しないからです。

2004年までは、口頭での保証契約も可能でした。しかし保証人や連帯保証人は生活に著しい支障をきたすケースも多く、責任の重さを鑑みて書面で契約するように法改正されました(民法第446条)。

ただし2004年以前に連帯保証人となった場合、書面がなくとも契約は有効に成立しています。契約書が見つからないときは、被相続人がいつから連帯保証人になったかを調査しましょう。

継続的保証は返済義務がない
被相続人が連帯保証人になっていても、原則として継続的保証であれば返済義務が発生しません。継続的保証とは、一定期間に生じる不特定の債務を保証する制度です。

継続的保証にもさまざまな種類があり、相続されるか否かも異なります。


種類、内容、相続の有無
・身元保証、雇用契約で生じうる損害を保証人が担保、相続NG
・信用保証、継続的な取引で生じる将来の債務を保証、相続NG


被相続人が身元保証または信用保証人であれば、そもそも相続自体が認められません。

ただし令和2年4月1日以前にアパートなどの賃料の連帯保証人となっていた場合は、相続の対象になります(改正後は対象外)。

連帯保証が時効になっている可能性もある
連帯保証に時効が成立している場合も、効力が消滅する要素のひとつです。一般的に債権の消滅時効は、次のように要件が定められています。

債権者が権力を行使できるのを知ったときから5年
債権者が権利を行使できるときから10年

仮に、主債務者が弁済を5年間怠っていたとしましょう。債権者がそれを把握していたにもかかわらず、何もせずに放置していると連帯保証人側からも時効を援用できます。

ただし、以下の時効の完成猶予と更新事由には注意が必要です。



時効の完成猶予:時効の完成を一定期間猶予する
・裁判上の請求
・支払督促申立て
・強制執行
・仮差押えなど


時効の更新:新たに時効期間を計算し直す
・裁判の確定
・支払督促の確定
・強制執行の終了など


まとめ
被相続人が連帯保証人でも、相続放棄をすれば債務を引き継ぐ義務はありません。しかし相続放棄には期限があるため、前もって準備しておく必要があります。

期限は3ヶ月と短く、後回しにしていると間に合わなくなってしまいます。早めに弁護士と相談しつつ、一緒に手続きを進めてもらったほうが望ましいでしょう。 




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