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相続放棄でやってはいけないことは何?具体的な事例を紹介



皆さんは、相続に関する準備を今のうちから進めているでしょうか。

「親族の債務を放棄したいが、条件をあまり理解していない」

「相続放棄のルールを認識していない」

などのように、相続の知識を習得できていない方も少なからずいるでしょう。

いつ親族が亡くなるかはわからないため、事前に相続放棄の勉強をしておくことが重要です。

この記事を最後まで読めば、相続放棄において禁止されている行為や具体的な事例が理解できます。親族の財産や債務を引き継ぎたくない方は、記事の内容に目を通してください。


相続放棄でやってはいけないこと

相続放棄をする際に、やってはいけないことが大きく分けて2つあります。

・相続財産の処分

・相続財産の隠匿および消費

ここでは、これらの行為をやってはいけない理由も含めて、具体的な内容を解説しましょう。


相続財産を処分すること

相続放棄をする場合は、相続財産を処分してはいけません。処分に含まれる行為の例を以下に示しましょう。

・売却

・贈与

・損壊・破損行為

相続人が、これらの行為をすると単純承認したとみなされます。つまり、無条件で相続したと判断されるため、その後に放棄することは基本的にできません。一方で、例外のケースとして以下の表にまとめた処分も押さえてください。


相続放棄が認められる処分

主なケース

保存行為

・期限が過ぎた債務の弁済

・建物の修繕

短期賃貸借

・土地(樹木の伐採を目的としないもの)の場合は5年

・建物の場合は3年


これらの行為は単純承認にはあたらないため、相続放棄が認められます。


◯相続財産を隠匿・消費すること

相続財産を隠匿・消費すること相続財産の隠匿や消費も、相続放棄をするうえでやってはいけない行為として挙げられます。言い換えれば財産を隠したり、使用したりしてはいけません。

隠匿および消費すると、財産を今後も使う意思があるとみなされてしまいます。加えて相続財産があることを知りながら、財産目録に記載しないことも禁止されている行為の一つです。

これらの行為は、相続放棄後もやってはいけないと民法第921条3項に定められています。今後の生活にも大きく関わる部分にもなるため、財産の取り扱いには十分注意しましょう。


●相続放棄の前後でやってはいけない事例

相続放棄の前後でやってはいけないことを民法の条文だけで確認しても、具体的なイメージがつきにくいと感じる人もいるでしょう。ここでは、実際の生活で起こりうるケースを取り上げつつ、避けた方がよい行為についてまとめます。


葬儀費用の支払い

相続放棄の前後で禁止されている行為の一つは、相続財産の一部を葬儀費用の支払いに充てることです。葬儀を開くと、約200万円と多額の費用が発生します。金額の負担を少しでも軽減しようと、被相続人の財産をあてにする家庭も一定数いるでしょう。

しかし、被相続人のお金を葬儀費用に充ててしまうと、相続財産を使用したとみなされてしまいます。相続する意思があると解釈されるため、相続放棄は認められません。節約を意図した行為が、かえって今後の生活にダメージを負うことも考えられます。

葬儀費用の負担を減らしたいのであれば、自治体から支給される制度を利用できないか確認を取りましょう。こちらの制度は自治体が出費するため、仮に支給されても相続放棄は問題なく行えます。


賃貸の解約

被相続人が賃貸物件で生活していた場合は、解約の手続きは避けた方が賢明です。賃貸物件を借りていた被相続人は、当時「賃借権」を有していました。つまり、その権利に基づいて解約すると、財産を単純承認したと判断されてしまいます。

また、大家や不動産会社側から解約を促すような連絡が来るケースもあるでしょう。可能であれば、合意解除ではなく賃料未払いによる法定解除で手続きを進めるのをおすすめします。一方的に解約されたと認識されれば、自ら財産を処分した行為にはあたらないためです。

しかし、賃貸の解約はさまざまな問題を抱えるケースがあるため、プロの弁護士や司法書士にも相談してみましょう。


実家の解体や売却

実家を解体したり、売却したりする行為も相続放棄における禁止事項です。こうした手続きも、一般的には相続財産を処分したとみなされてしまいます。

被相続人の住居が空き家になると、管理はどうしても難しくなるでしょう。もし国庫に財産を帰属させたいのであれば、相続財産管理人を定める必要があります。とはいえ、相続財産管理人の選任にかかる費用は100万円に達するケースもあるため、慎重に判断した方が得策です。

なお実家の老朽化に伴う修繕費は、あくまで保存行為と解釈されます。保存行為の場合は相続放棄に影響が及ばないため、区別して覚えてください。


遺品整理

遺品整理も、相続放棄が認められないケースの一種です。遺品整理は、被相続人の使用していた生活用品や遺産などを処分する行為を指します。

一方で、遺品の中には家族での思い出の写真が隠れている場合もあるでしょう。家族の写真は基本的に資産価値がないため、持ち帰ったとしても相続放棄には影響がありません。

また、相続財産管理人が決まっていないときは財産の管理が義務付けられます。財産の管理に不都合が生じるのであれば、例外的に遺品整理が可能になるケースもあります。他にも、被相続人が孤独死だった場合も同様です。遺体の腐敗が進んでいるなど、早急な処置が必要になる場合は、相続放棄をしても遺品整理は行わないといけません。


◯車の売却、処分

車の売却、処分車の売却、処分も相続放棄をしたい人は行わないのが原則です。他の財産と同様に、相続人側で手続きをすると単純承認したと捉えられてしまいます。ただし価値が全くないと判断されれば、相続放棄に影響が出ない場合も考えられます。

車の資産価値がゼロになる具体例は、新車の状態から一定の年数が経過した場合です。車は減価償却資産であり、法律で次のように耐用年数が定められています。

・普通自動車 6年

・軽自動車 4年

それぞれの年数が経過すると、一般的には資産価値がゼロとみなされます。

とはいえ車種や機能によっては、耐用年数を過ぎても資産価値がゼロにならない可能性もあります。売却や処分の手続きをする前に、一度査定を依頼してみるとよいでしょう。


入院費用の支払い

被相続人が病院で死去した場合、施設から入院費用の請求が届きます。この費用についても、被相続人の財産から支払わないようにしてください。相続財産で支払いを済ませると、処分の行為に該当して相続放棄ができなくなります。

入院費用を払う際には、相続人同士で出し合うことをおすすめします。相続放棄に支障が出ないようにするためにも、相続財産には手を付けてはいけないと押さえましょう。


借金や税金の支払い

借金や税金も、相続放棄したいのであれば相続財産から支払うのは避けた方が得策です。どのような目的で使用しても、ルール上は処分とみなされてしまいます。借金や税金は「支払うべきもの」といった固定観念にとらわれやすく、つい支払ってしまう人も少なくありません。

一方で相続放棄をしてしまえば、これらの費用に関する支払い義務はなくなります。勝手な判断で被相続人の財産には手を付けず、今後の対応をあらかじめプロの弁護士や司法書士に相談するよう意識してください。


預貯金の引き出し、解約、名義変更

被相続人の預貯金を引き出す行為は、相続放棄に関係なく基本的には禁じられています。刑法の罰則こそありませんが、他の相続人から返還請求された場合は応じなければなりません。無論、勝手に被相続人の預貯金を使った場合は、相続放棄が認められないため注意しましょう。

加えて、預金口座の名義変更や解約を行うこともNGとされています。こちらも単純承認の事由に該当するため、手続きを進めないようにする方が賢明です。仮にお金を引き出して使っていないのであれば、裁判所に申請書を届ける必要があります。


携帯電話の支払い・解約・名義変更

携帯電話も、民法上では相続財産の一種と考えられています。被相続人の財産から携帯料金を支払ったり、解約および名義変更したりすると相続放棄ができなくなるので注意してください。

そもそも、相続をしない場合は携帯料金を支払う必要がありません。なぜなら被相続人の債務を引き継ぐ義務もなくなるためです。なお携帯電話の解約や名義変更も、法律上は処分とみなされて単純承認したと解釈される恐れがあります。まずは、相続放棄の手続きから進めるようにしましょう。

相続放棄の手続きが済んだら、携帯会社にその旨を報告しなければなりません。報告する際には「相続放棄申述受理通知書」の届出が必要です。


公共料金の支払い・解約・名義変更

公共料金の支払い・解約・名義変更も、相続時には慎重に判断しなければなりません。こちらも基本的に相続放棄をするのであれば、手続き自体は不要です。むしろ手続きを行うと相続放棄ができなくなるため、注意する必要があります。

仮に公共料金を支払う場合は、相続する側が貯金で対応するようにしてください。相続財産から出すことはせず、自費で負担するものと覚えておきましょう。

こちらも携帯料金と同様に、相続放棄の手続きが済んだら業者に連絡を入れた方が得策です。書類の提出を求められるケースもありますが、しっかりと報告すれば滞納分の請求もされなくなります。


●まとめ

今回は、相続放棄でやってはいけないことを具体的な事例も挙げながら解説しました。さまざまな事例を取り上げましたが、共通して押さえてほしいポイントは相続財産に手をつけないことです。放棄する旨を主張したいのであれば、諸々の手続きを1人で進めないようにしましょう。

特に、解約や名義変更の手続きも単純承認に該当するケースがあるので注意が必要です。初めてのことばかりで混乱するかもしれませんが、まずは弁護士や司法書士から助言を貰うのをおすすめします。

藤沢市、鎌倉市、茅ケ崎市近郊で、遺産分割に関してお困りでしたら弁護士松永大希(藤沢かわせみ法律事務所)までご連絡下さい。

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