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自筆証書遺言と公正証書遺言の優先順位

遺言は、一生のうちに一度しか書いてはいけないということはありません。ご相談やご依頼をお受けする中で、被相続人が遺した遺言が複数存在するということは実際にあることです。

自筆証書遺言は、被相続人が自筆で記した遺言です。公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。被相続人の遺言として、自筆証書遺言と公正証書遺言の両方が存在している場合、「公正証書遺言の方が正式に作成されたものだから効力が優先する。」ということはありません。両方の遺言が作成された日付、内容を比較検討して、どちらの遺言が有効かということを検討する必要があります。なお、自筆証書遺言は、全文、日付および氏名を自署し、印を押さなければならない(民法968条1項)とされており、このコラムで説明する自筆証書遺言は、これらの要件を問題なくみたすものであることを前提とします。

遺言は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。また、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。

たとえば、公正証書遺言(平成26年5月7日作成)には、甲という不動産をAという相続人に相続させると記載されているとします。そして、自筆証書遺言(平成27年5月7日作成)には、甲という不動産をBという相続人に相続させると記載されているとします。この場合、甲という不動産をA、Bの二人に相続させることはできませんので、公正証書遺言と自筆証書遺言の内容は相互に矛盾することになります。この場合、前に作成された公正証書遺言は、後に作成された自筆証書遺言によって撤回されたものとみなされ、後に作成された自筆証書遺言が有効となり、被相続人の遺志は、「甲という不動産をBという相続人に相続させる。」ということになります。

一方、公正証書遺言(平成26年5月7日作成)には、甲という不動産をAという相続人に相続させると記載されているとします。そして、自筆証書遺言(平成27年5月7日作成)には、乙という不動産をBという相続人に相続させると記載されているとします。この場合、甲という不動産をA、乙という不動産をBに相続させるという内容に矛盾はありませんので、両方の遺言が有効であることになります。

一緒に生活している家族が誰かによって、遺産をどの相続人に遺したいかという気持ちに変化が起きるのは珍しいことではないと思います。ただ、遺言が複数存在する場合、遺言の内容によって多くの相続財産を取得することができる相続人とそうでない相続人の利害が対立することになり、自筆証書遺言の効力が裁判によって争われる(遺言無効確認訴訟等)ことになってしまうかと思います。

このような事態を避けるために、当事務所において遺言作成のお手伝いをさせて頂く場合には、可能な限り公正証書遺言を作成し、その上で、以前に遺言を作成したことがある場合には、公正証書遺言において前の遺言の撤回を明確にして頂くよう、アドバイスをさせて頂いております。

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