好意同乗、無償同乗に基づく減額
知り合いを無償で自動車に同乗させている際、交通事故を起こしてしまい、同乗者にケガをさせてしまった場合、好意・無償で同乗させていたことが損害賠償額の減額の根拠となるかどうか、という問題です。好意同乗、無償同乗と言われています。
自動車損害賠償保障法(自賠法)3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定しています。この「他人」には、同乗者も含まれています。
自動車に乗っている場合、常に事故のリスクがあります。そのため、そのリスクを承知で同乗していたのだから、発生した損害の全てについて運転者が負担すべきでないという考え方もあるかもしれません。ただ、実際には、好意同乗、無償同乗というだけで直ちに減額の理由となることはないという傾向にあります。
一方で、好意同乗、無償同乗が損害賠償額の減額の要素に一切ならない、ということもありません。
たとえば、
・運転者のスピード違反を煽っていた
・運転者が疲労困憊している状態で運転していることを知っていた
・運転者が無免許であることを知っていた
・運転者がお酒を飲んで酩酊状態であることを知っていた
等の事情が認められれば、減額の可能性はあります。その他にも減額の要素はありますが、上に挙げた要素をご覧いただければ分かるとおり、当たり前の事情が理由で減額されることが多いように思います。
そして、減額される割合についてですが、個々の事案によって事情は異なりますが、10パーセント程度の減額がなされる裁判例が多いように思います。ただ、事案によっては、30パーセントの減額が認められた裁判例もあります。