著作権の譲渡と著作物の利用許諾
著作権は、その全部または一部を譲渡することができます(著作権法61条1項)。また、著作権者は、他人に対して、著作物の利用を許諾することができます(著作権法63条1項)。著作権の譲渡と著作物の利用許諾の違いは、著作権者に変更があるかないか、という点にあります。そのため、本来は、著作物の利用を許諾するだけのつもりが、著作権の譲渡をしてしまうと、自己が著作物を利用することができなくなってしまいます。インターネット上には、著作権、著作物に関する契約書のひな形が多く存在していますが、その内容をよく吟味しないとトラブルの元となってしまうこともあります。
ひとことで「著作権」と言っても、その内容は、複製権、上演権、演奏権、上映権等、様々あります。著作権の譲渡においては、その全部を譲渡することも、一部のみを譲渡することもできます。一方で、契約書上、「著作権を譲渡する。」と記載するのみでは、どの著作権を譲渡するのかがその条文だけでは分かりません。また、「すべての著作権を譲渡する。」と記載することで、全ての著作権を譲渡することができるようにも思えますが、二次的著作物の創作権(著作権法27条)、二次的著作物の利用権(著作権法28条)は譲渡されません(著作権法61条2項)。著作権の全部を譲渡する場合には、さらにもう一言、言葉を加える必要があります。
著作権の全部を譲渡した場合であっても、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権等)は譲渡することはできません。ちなみに、著作者人格権は相続もされません。そのため、著作権の譲渡に関する契約書を締結する場合には、著作者人格権に関する規定を設けておくことが多いかと思います。
著作権に限ったことではありませんが、契約書は締結してしまうと、その内容を変えることは難しいことが多いです。契約を締結する前に、その内容を十分に検討することは最低限必要なことであると思います。可能であれば、弁護士にご相談して頂くことをお勧めします。なお、著作権等の知的財産権が訴訟の対象になる場合、東京地裁や大阪地裁などの大規模な裁判所では、知的財産権を集中的に取り扱う部に訴訟が係属することになります。そして、高等裁判所に関しては、「知的財産高等裁判所」という知的財産権に関する控訴審等を専門に取り扱う裁判所において審理が行われることになります。名前が違っても国内の裁判所であることに変わりありませんが、通常の高等裁判所とは異なる点もあります。