民事訴訟に関するあれこれ
今回は、民事訴訟に関するあれこれを、Q&A方式でご説明したいと思います。モデル事例としては、貸金返還請求をイメージして頂ければ良いかと思います。
Q.民事訴訟を提起したいと考えていますが、どのような手続きが必要ですか?
A.管轄裁判所に訴状その他必要書類を提出する必要があります。原告または被告が法人の場合には、法人の登記を添付する必要があります。法人の登記は法務局で申請すれば取得することができます。その他には、訴額に応じた印紙を貼付する必要があります。また、被告へ送達するために、郵便切手を予め納める必要があります(予納郵券)。予納郵券の金額は裁判所ごとに異なりますし、指定された金額の切手を指定された枚数納める必要があります。たとえば、東京地方裁判所では、被告1名の裁判について6000円分の予納郵券を納める必要がありますが、内訳が細かく指定されています。そのため、訴訟を提起する前に管轄裁判所に予納郵券の内訳を聞いておくと良いと思います。なお、内訳を無視した予納郵券を納めたことはありませんので、その結果がどうなるかは分かりません。
Q.訴状を提出すれば、すぐに裁判が始まるのですか?
A.訴状を提出した後、訴状の形式面に不備がないかの確認が行われます。訴状の形式面に不備がない場合、裁判の第1回期日が指定されますが、訴訟提起から1か月以上先の日程が指定されることがほとんどだと思います。この期間に、被告に対して訴状が送達されます。
Q.訴状の書き方が分からないのですが、弁護士に訴状作成の代理を依頼することは可能ですか?
A.実際にはご相談者と協議の上で決めることになると思いますが、当事務所では、訴状のみの作成の代理をお受けすることは少ないかと思います。裁判は訴状の記載のみで決まるわけではなく、その後の被告の反論に応じて、主張や証拠を追加する必要があります。そのため、訴状だけを作成すれば紛争が解決するわけではないため、訴状のみの作成をお受けすることでご相談者のご希望がかなうことは少ないような気がします。
ご自身で訴状を作成して頂いて、その内容に不備がないかどうかチェックしたり、その後に作成する書面の内容をチェックすることは、法律相談としてお受けすることが可能ですので、法律相談をご利用頂ければと思います。
Q.証拠を提出する時期で、結果が有利になったり不利になったりすることはありますか?
A.ケースバイケースとしかお答えできません。ただ、貸金返還請求であれば、お金を貸したことを示す証拠が存在するかと思います。請求の根幹を形成するような証拠に関しては、訴訟の初期の段階で提出した方が良いように思います。
Q.今日が裁判の第1回期日でしたが、被告が出頭しませんでした。被告が欠席したため、欠席判決で私の勝訴かと思いましたが、次回の裁判期日が設定されました。どのような理由ですか?
A.裁判においては、事前に提出した書面を、裁判期日で陳述することで、書面に記載された主張を裁判上で主張したことになります。ただ、裁判の第1回期日においては、被告が仕事等の都合で裁判に出席することができないことも考えられます。そのため、答弁書という反論書を提出しておけば、答弁書を陳述したこととみなすことができるとされています(擬制陳述)。
Q.被告が反論書面を提出してきたため、次回期日までに被告への反論を書面で提出して欲しいと裁判所に言われました。書面の提出期限が設定されたのですが、その時期は仕事が忙しく、締切を守れるかどうか自信がありません。書面提出の締切を守った方が良いでしょうか?
A.自戒を込めた回答になってしまいますが、書面の提出期限は厳守した方が良いです。
Q.証拠もしっかり揃っていて、私が勝訴することは当然のような気がしています。その上で私が注意しておくべき点はありますか?
A.証拠が十分かどうかは分かりませんので、「証拠が十分である。」ということを前提として回答させて頂きます。最終的な回収可能性について検討しておく必要があります。判決が下されて裁判が確定したにもかかわらず、被告が金銭を支払わない場合に強制執行することができる被告の財産を把握しているかどうかが大切です。また、裁判上の和解に関する話合いが行われた場合に、和解に応じるかどうか、どのような条件であれば和解に応じるか、ということも検討しておく必要があります。