遺産分割調停成立後に行うこと(注意点)
遺産分割調停が成立すると、相続発生からの手続きが一段落します。代理人として調停に参加していた場合には、一安心することができます。ただ、調停で合意した内容に従った履行という課題が残されていますので、完全に安心することはできません。
1.不動産について
遺産分割調停により、相続財産である不動産の帰属を合意した後は、合意内容にしたがって登記手続きを行うことになります。この場合には、調停調書や必要書類を準備して司法書士に登記手続きを依頼することが多いです。ただ、調停調書の記載方法や内容次第では、調停調書に基づく登記手続きが受け付けられない場合もあるため、注意が必要です。単純な内容であればまだしも、登記手続きに関する調停条項に条件が付されている場合などは要注意です。事前に調停条項案を作成する段階で、不動産登記に関する条項を可能な限り単純化するように努めることもありますし、登記手続きをお願いする予定の司法書士に事前に確認したりするようにしています。
2.預貯金について
預貯金は、本来、遺産分割調停の対象に含まれませんが、相続人全員の同意があれば、遺産分割調停の対象に含めることができます。実際には、預貯金という分割しやすい財産を含めて話合いを行った方が、柔軟な解決を図ることができますので、預貯金を遺産分割調停の対象に含めることが多いというのが個人的な感覚です。
この場合、預貯金の帰属に関しても、遺産分割調停で合意することになりますが、実際に被相続人の預貯金の解約・払戻しを行う場合には、調停調書だけではなく、各金融機関の所定の手続用紙と相続人全員の印鑑登録証明書等が必要となることがほとんどです。当事者同士の話合いで解決せず、家庭裁判所の遺産分割調停で合意しようとする場合、相続人同士の感情的対立が完全に解消されないこともあります。そのため、遺産分割調停成立後に各金融機関の所定の手続用紙への署名捺印、印鑑登録証明書の交付を求めたとしても、任意の協力を得ることが困難な場合もあります。別途、協力を得られない相続人を被告として民事訴訟を提起する方法がないわけではありませんが、時間もかかりますし、手続きとして迂遠です。
後日の手続きを円滑に進行させるため、調停成立時に必要書類の授受を行うという方法を考えることもありますし、他の相続人が預貯金の解約・払戻しに協力するメリットがあるような調停条項の作成を考えることもあります。
今回ご紹介した不動産、預貯金については、遺産分割における相続財産の代表的なものですが、その他にも様々な種類の相続財産があります。遺産分割に代理人として参加する場合、これらの履行の手続きが全て完了して初めて、安心することができます。