国選弁護人と私選弁護人
刑事弁護人には、国選弁護人と私選弁護人の2種類があります。国選弁護人は、貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができない場合に選任されます。そのため、法の建前上は、自身で弁護士費用を支払う私選弁護人が原則と言えます。ただ、実際には、私選弁護人よりも国選弁護人の方が、件数は多いです。
弁護士費用が高いか安いかはありますが、国選弁護人と私選弁護人との違いは、弁護人を選ぶことができるかどうか、ということにあります。国選弁護人の場合には、弁護人を選ぶことはできませんが、私選弁護人の場合には、自身、若しくは、自身の家族が弁護人を選ぶことができます。
また、「国選弁護人は熱意が足りないということを聞いたことがありますが、本当ですか?」というご相談をいただくことがありますが、私自身は、国選弁護人と私選弁護人とで弁護活動に大きな差異を設けることはしていないので、「人によるのかもしれないですが、そんなことないと思いますよ。」と回答しています。ただ、そうすると、「弁護人としての活動が同じであれば、費用が安い国選弁護人の方が良い。」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。考え方は人それぞれなので、強制はできませんが、早期に私選弁護人を選任しておいた方が良いケースもあります。特に、勾留から起訴前の段階(被疑者段階)において、国選弁護人が就任しないケースのうち、被害者に対して被害弁償を行う必要がある場合には、私選弁護人を選任した方が良いかと思います。被疑者国選弁護人は、法定刑が「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固」に該当する事件について選任されます。そのため、それ以外の事件(たとえば、暴行罪や痴漢(迷惑行為防止条例違反)等)に関しては、被疑者国選弁護人が選任されません。これらに関して、被疑者段階で被害弁償を試みる場合には、私選弁護人を選任する必要があります。
その他にも、身柄を拘束されていない在宅事件の場合も、被疑者段階においては国選弁護人が選任されませんので、事案の内容によっては、私選弁護人を選任した方が良いケースもあります。