立退料の相場
「立退料の相場を教えて欲しい。」というご相談をお受けすることがあります。
ただ、法律や裁判例等で立退料の計算方法が定まっているわけではありませんので、ご相談時にお伝えできるとすれば、厳密には「立退料の相場」ではなく、「ご相談者の事情に照らして、妥当と思える立退料の金額」になろうかと思います。
貸主側から契約の更新拒絶を行うためには、「正当の事由」(借地借家法第6条、第28条)が必要とされており、正当事由を判断する際の1つの考慮要素として、立退料を支払うか否かということが挙げられています。ただ、これは、あくまでも更新拒絶における正当事由を判断する際の考慮要素として立退料が挙げられているにすぎず、立退料の金額についてまで言及しているわけではありません。そのため、交通事故の損害賠償請求のような「相場」のようなものは存在せず、過去の類似の裁判例やご相談者の事情に照らし合わせて考える必要があります。
具体的には、居住用の物件か営業用の物件か、立退きを求めている賃貸人側の事情(自分自身で物件を利用したい、建物が老朽化したので建て替えたい等)は何か、転居費用や営業損失といった賃借人側の事情等、様々な事情を総合的に考慮する必要があります。一方、賃貸人が物件の明け渡しを求めている理由が、賃借人による賃料の度重なる滞納であるような場合には、立退料は発生しないものと考えています。この場合には、賃借人に債務不履行があったとして、賃貸借契約が解除されます。契約解除を行った場合の現実の明渡しや、物件内の動産の処分に関しては、また別の法律問題となりますので、後日、改めてご説明させて頂く予定です。
居住用のアパートやマンションを借りていて、急な立退きを求められた場合、費用対効果という面から、弁護士を代理人として交渉するということは難しいケースが多いように思います。このような場合であっても、立退料の金額や交渉の仕方等、法律相談だけであっても、お役に立つことはできると考えています。
また、最終的に立退料の金額に関する合意ができた場合には、その内容をしっかりと書面に残しておくことが大切です。立退料の金額は幾らなのか、その支払いはいつ行われるのか、等の支払条件について書面を取り交わすことが大切です。また、このような書面を取り交わす際には、賃貸借契約の終了時期、物件の明渡時期等についても、併せて書面を取り交わしておくことが多いと思います。