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役員・従業員の競業避止義務

「最近まで在籍していた会社の役員や従業員が、自社と同種の事業を行っている。」、「自社の取引先を引き抜こうとしていて困っている。」等のご相談を受けることがあります。いわゆる、競業避止義務・競業禁止義務に関する法律問題です。

取締役の在任中の競業避止義務を定めた法律としては、会社法356条があります。この規定は、あくまでも在任中に関する規定であるため、退任後においても適用されるわけではありません。また、従業員の退職後の競業を制限する法令もありません。一方で、取締役の委任契約書や従業員の雇用契約書において、退任・退職後の競業禁止について定められていることは多いように思います。会社が長年にわたり築き上げてきたノウハウや営業秘密を守りたいという気持ちがある一方、退任・退職した者がこれまでのキャリアを活かして新しい仕事を始めたいという気持ちもあるかと思います。特に、後者に関しては、職業選択の自由という憲法上の人権に関わります。

退任・退職後の競業禁止に関する条項に関しては、契約書に記載しておけばどのような場合にも有効となる、という性質のものではなく、事情によっては、その効力が無効となる場合もあります。結局のところ、個別の事情によって判断する必要があります。一般的には、競業禁止の期間・地域、代償措置の有無等が判断要素として挙げられることが多いように思います。なお、従業員による退職後の競業行為が問題となった事案として、最高裁平成22年3月25日判決があります。この判例は、一般的な基準というよりは、個別の事案に応じた判断をしたと考えられますので、全ての事案に当てはまるというわけではないと思いますが、無視することができるものでもありません。

会社の側からすれば、出発点は、契約書等において、退任・退職後の競業禁止を明示しておくことだと思います。その際、競業禁止に関する条項の効力が争われてしまった場合のことを想定して、条項の内容を詰めておく必要があります。そして、万が一、退任・退職後の競業行為が判明した場合には、競業行為を中止するよう書面を送ったり、弁護士に依頼したりすることになろうかと思います。任意の交渉が解決することができればそれが最も良いですが、交渉が決裂してしまい、訴訟提起を検討する場合もあります。ただし、訴訟は時間がかかります。その間に会社の損害が拡大することは避ける必要があります。その意味において、仮処分という手続きが適している分野ではないかと考えています。




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